シンリョクカ(Shinryokuka)とは、2020年生まれの日本の競走馬である。鹿毛の牝馬。
概要
父サトノダイヤモンド、母レイカーラ、母父キングカメハメハという血統。
父は2016年の菊花賞でサトノ軍団悲願のGⅠ制覇を果たし、同年の有馬記念も制した馬。ディープインパクトの後継として期待されて種牡馬入りしたが、初年度産駒は総じて苦戦し、現在は社台スタリオンステーションから放出されてしまった。シンリョクカはその初年度産駒の1頭である。
母はマイルCS馬ダノンシャークの半妹で、2013年のターコイズS(OP)の勝ち馬。シンリョクカは第5仔。1歳下には全弟のサトノオラシオンがおり、こちらは2024年9月現在1勝クラス。
母父は説明不要、2024年に顕彰馬入りを果たした非SS系筆頭の大種牡馬。
2020年1月24日、日高の名門、下河辺牧場にて生まれる。下河辺牧場の秘密兵器と呼ばれる。
90年代末、牧場の専務がアイルランドで修行していた際、2000年の英愛ダービーと凱旋門賞を制した名馬Sinndarの育成を担当。このSinndarを種付けするためにイギリスのセリで購入し、予定通りSinndarを種付けして日本に連れてきたのが、シンリョクカの2代母*カーラパワーだそうである。
オーナーは由井健太郎。由井オーナーは牡馬には冠名「ユイノ」を用いているが、牝馬のシンリョクカは冠名無しで命名されている。
その名の由来は、由井オーナーの出身校である成蹊学園で毎日音読される修養文「心力歌」(公式HPリンク)。ちなみに由井オーナーはシンリョクカの同期として、同じく成蹊学園の修養文に由来する「ギョウネン(凝念)」(オルフェーヴル産駒)も所有している。
ココロ、チカラ、そしてウタ
デビュー~2歳時
2015年開業の美浦・竹内正洋厩舎に入厩(余談だがギョウネンも同厩舎である)。2歳10月の新馬戦(東京芝1600m)にて、吉田豊を鞍上にデビュー。中団から上がり最速を繰り出し快勝する、今後にも期待できる勝ち方を決めた。
この結果に陣営はだいぶ強気になったらしく、次戦にGⅠ・阪神ジュベナイルフィリーズを選択。当然ながら新馬戦勝ちのみでは収得賞金は400万しかなく、出走には確率14分の3の抽選を潜り抜けなければならない。結論から言えば無事出走権を掴んだのだが、この時陣営は「除外された場合は朝日杯に出る」と表明しており、その豪胆さにSNSは沸いた。
思えば、これがこの馬の数奇な運命の始まりだったのかもしれない。
本番では、鞍上を竹内厩舎所属の木幡初也にスイッチ。抽選馬である上、デビュー9年目で未だ大きな実績を挙げていなかった木幡騎手の起用も相まってか、53.9倍の12番人気となった。しかしレースでは内枠を上手く活かし、粘り込んでリバティアイランドの2着。人気を踏まえると大健闘であった。
3歳~奇妙なるクラシック戦記~
GI・2着に入って収得賞金の加算に成功した(ここまで通算1700万)ことで、陣営は3歳初戦に桜花賞(GⅠ)直行を選択。2010年代後半以降、十分な賞金を稼いだ馬は消耗を防ぐため、トライアルレースを挟まず本番へ直行することがトレンドとなっており、本年のシンリョクカも例年であればまず出走可能な収得賞金を確保していたからだ。
……しかし、そうは簡単にいかないのが競馬の恐ろしさ。2023年度はシンリョクカと同じように、重賞で賞金を加算したら直行コースを選択する陣営が増えた結果、トライアルに重賞馬がほとんど出ない状態となった。当然、トライアルで優先出走権を確保した馬に押され、桜花賞出走の賞金ボーダーラインは1750万円まで上がってしまう。下河辺牧場もTwitterで頭を抱えていた。しかし陣営は回避せず、更には「もし除外されたなら皐月賞に出る」と表明し、再びSNS上で話題になった。結局、直前にファンタジーS勝ち馬のリバーラ(収得賞金2000万)が回避し、シンリョクカは桜花賞に滑り込むことができた。
鞍上は吉田騎手に戻ったものの、馬券師たちには阪神JF2着はフロックと思われたのであろうか、9番人気に留まる。レース本番では後方から上がり3ハロン3位の末脚を繰り出すも、結果はリバティアイランドの6着。オークスを期待できる内容ではあったが、ほぼ同位置でレースを進めていたリバティアイランドとは差を詰めるどころか、逆に広げられる格好となってしまった。
次走はオークス(GⅠ)を選択。桜花賞の内容もあり、7番人気となる。しかしレースでは特に目立つことなく、リバティアイランドに大差の5着に終わった。春シーズンはこれにて終戦、夏休みに入る。
秋シーズンは牝馬3冠最終戦の秋華賞に直行、もしくは優先出走権確保+賞金加算のために紫苑S、ローズSいずれかの秋華賞トライアルに進む……と競馬ファンは予想していた。
……が、発表された次走は秋華賞の前日、古馬牝馬との対戦になるアイルランドトロフィー府中牝馬ステークス(GⅡ)! これには様々な憶測があるが、牝馬3冠がほぼ確実視されていたリバティアイランドは秋華賞後にジャパンCに向かいそうなこともあり、シンリョクカ陣営はエリザベス女王杯に目標を定めていたのではないかと思われる。
レース本番はと言うと……唯一の3歳馬ながら3番人気に推されるものの、流石に厳しかったか見せ場なく10着。
それでも陣営は次走にエリザベス女王杯(GⅠ)を選択(幸い賞金は足りた)。鞍上には再び木幡騎手が起用され、阪神JFで見せた奮戦が期待されたが……。結果は同期・ブレイディヴェーグの9着。
これをもってシンリョクカの2023年戦線は終わった。「やたらとGⅠに登録しては滑り込み出走する、えらく前のめりな根性のある女の子」……。下河辺牧場の秘密兵器は、そんなネタ扱いをされつつ翌年にに備える。
4歳~落馬事故と復活~
4歳になったシンリョクカ。初戦は日経新春杯(GⅡ)である。鞍上は木幡騎手が続投し、以降事実上の主戦として固定される。
レースでは果敢に先行策を取るも、ハイペースが祟り10着に敗れた。
次走は勿論GⅠ・大阪杯……なんてことは流石に無く、堅実に中山牝馬ステークス(GⅢ)が選択された。ここでは阪神JFと同様、内枠から粘りこんで3着に入る。
一か月後、「次こそは」と福島牝馬ステークス(GⅢ)に出走。だが、ここで事故が起こる。
先行するシンリョクカは、同じく先行していたフィールシンパシーの足に絡まり、後続のライトクオンタムを巻き込んで転倒してしまう。木幡騎手は右尺骨を骨折し全治2か月、ライトクオンタム鞍上の吉田隼人はくも膜下出血で長期離脱の重傷を負ってしまった。更にライトクオンタムもこの後引退を余儀なくされる。
この年は3月~4月にかけて騎手の殉職事故が立て続けに発生[1]しており、競馬ファンには改めて「競馬は命がけの仕事」という現実が突き付けられたのだった。
シンリョクカも復帰が危ぶまれたが、幸いにもキ甲の骨折と軽傷で済んだ。木幡騎手も復帰し、秋シーズンの初戦は新潟記念(GⅢ)が選択された。
骨折明けで8番人気となったシンリョクカは、先行策から持ち前の粘り強さを発揮し、見事に2勝目を挙げた。木幡騎手、竹内師、由井オーナーにとっても初の重賞タイトルである。ちなみにサトノダイヤモンド産駒としても、同期のサトノグランツに続く2頭目の重賞馬になった。
最後は馬の力を信じて頑張るだけでした。
負けん気と根性が一番いいところで、女の子だけど本当に尊敬できる馬。
先生やオーナー、厩舎にものすごくお世話になっているので、ちょっとですけど恩返しできて、嬉しいですね。
この勝利で勢いに乗り、次走は前年同様エリザベス女王杯へ直行予定。秋は一気呵成にビッグタイトルを狙いに行く方針のようだ。
陣営の前のめりな姿勢が乗り移ったかのような負けん気と根性を魅力に、型破りな戦績を辿るシンリョクカ。今後はGⅠまで手が届くのか、3冠牝馬となった同期のリバティアイランドにリベンジを果たす日はくるのだろうか。
血統表
サトノダイヤモンド 2013 鹿毛 |
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
*ウインドインハーヘア | Alzao | ||
Burghclere | |||
*マルペンサ 2006 鹿毛 |
Orpen | Lure | |
Bonita Francita | |||
Marsella | *サザンヘイロー | ||
Riviere | |||
レイカーラ 2009 鹿毛 FNo.1-u |
キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo | Mr. Prospector |
Miesque | |||
*マンファス | *ラストタイクーン | ||
Pilot Bird | |||
*カーラパワー 1998 鹿毛 |
Caerleon | Nijinsky II | |
Foreseer | |||
Jabali | Shirley Heights | ||
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