レディパステル(Lady Pastel)とは、1998年生まれの日本の競走馬。黒鹿毛の牝馬。
ケント・デザーモに外国人騎手初のクラシック勝利を贈った、出資者孝行な堅実派の2001年オークス馬。
主な勝ち鞍
2001年:優駿牝馬(GⅠ)
2003年:中山牝馬ステークス(GⅢ)、府中牝馬ステークス(GⅢ)
概要
父*トニービン、母*ピンクタートル、母父Blushing Groomという血統。
父はウイニングチケット、ベガ、ノースフライト、エアグルーヴ、ジャングルポケットなどを輩出して90年代にサンデーサイレンス、ブライアンズタイムと覇を競った名種牡馬。産駒は特に東京競馬場に滅法強いことで知られた。レディパステルは9年目の産駒。
母はアメリカ産でアメリカとフランスで走り、1991年のヴェルメイユ賞2着などの実績がある輸入繁殖牝馬。レディパステルは第5仔。
母父ブラッシンググルームは1977年のフランス2000ギニーなどG1を5勝し、種牡馬としても系統を確立するレベルの大成功を収め、世界的に衰退傾向のNasrullah系を現代まで繋げている(最近だとクロノジェネシスが直系子孫)。日本では母父としての成績が顕著で、ヤマニンゼファー、マヤノトップガン、テイエムオペラオーなどが母父ブラッシンググルームを持つ。
1998年4月26日、門別町のシンコーファームで誕生。シンコーファームはシンコウラブリイやシンコウウインディなど「シンコウ」冠名の安田修が1997年に開業した牧場で、彼女は2期生にあたる。その後もフミノイマージンなどを輩出したが、現在はダーレー・ジャパンに買収されてダーレー・ジャパン・ファームの本場になっているようだ。
オーナーはロードカナロアなど「ロード」冠名でおなじみ一口馬主クラブのロードホースクラブ。1口7.2万円×500口(=3600万円)で募集された。
「レディ」はクラブがかつて使用していた牝馬用の冠名で、彼女の同期にはディープインパクトの半姉で5歳になってデビューし5連勝したことで知られるレディブロンドがいる。
※本馬の現役期間は2001年の馬齢表記変更を挟みますが、本記事では現表記(満年齢)に統一します。
パステルカラーの令嬢
デビュー~オークス
ホッカイルソーやグルメフロンティア、シンコウウインディなどを管理した美浦・田中清隆厩舎に入厩。デビューはやや遅れ、3歳になってからの2001年1月8日、中山・芝1800mの新馬戦。デビュー2年目の減量騎手だった嘉藤貴行を鞍上に、50kgの軽斤量もあって3番人気に支持されたが、不良馬場で前残りの展開を早めに仕掛けていったものの、後に青葉賞を逃げ切るルゼルには全く届かず3着。
続く中1週で向かった中山・芝2000mの未勝利戦は先行したが、ここも逃げた馬に振り切られて2着。中2週で東京・ダート1600mの牝馬限定の未勝利戦に向かうと、ここを楽に逃げ切って勝ち上がる。
しかし桜花賞の抽選に潜り込むために向かった中山・芝1800mの平場500万下は、返し馬で掛かってしまったことが祟ってか、また逃げ馬に届かず2着に敗れ、田中師に怒られた嘉藤貴行騎手はあえなく降板。桜花賞は断念となる。
仕方ないので桜花賞の前日の中山・芝2000m戦、ミモザ賞(500万下)で新たに蛯名正義を迎えると、先行策から上がり最速という強い内容で2馬身差の快勝。この勝利で、トライアルからオークスを目指すことになった。
しかしフローラステークス(GⅡ)では蛯名正義にタイムフェアレディの先約があったため、陣営は短期免許で来日していたケント・デザーモ騎手に依頼。そのタイムフェアレディやフィリーズレビュー勝ち馬ローズバドを抑えて3.9倍の1番人気に支持されたが、先に抜け出した5番人気オイワケヒカリとの叩き合いに半馬身振り切られ2着。とはいえ優先出走権は手に入れたので、そのまま予定通りオークスへ向かうことになった。
というわけで迎えた優駿牝馬(GⅠ)では、桜花賞を単勝1.3倍の支持に応えて圧勝したテイエムオーシャンがここでも1.8倍の一本被り。桜花賞2着3着のムーンライトタンゴとダイワルージュがそのまま2番人気・3番人気で、フローラS組では最後方から上がり最速で3着だったローズバドが8.5倍の4番人気。レディパステルはフローラSでローズバドに先着したにもかかわらず、17.6倍とオッズではだいぶ離された5番人気であった。
しかし前走で「すごくいい切れ味を持っているよ」と彼女を評したデザーモは、その切れ味を活かすためにスタートで敢えてゆっくりとゲートを出して最後方に控えるという大胆な策に出る。同じく後方にいたローズバドが3角から進出を開始するとレディパステルもそれを追って進出開始。4角では馬群の中で明らかに物見をしてローズバドに先を行かれてしまったが、前目から伸びあぐねるテイエムオーシャンを尻目に先に抜け出したローズバドを目標にデザーモの豪腕が唸りを上げ、レディパステルは猛然と脚を伸ばす。最後はクビ差ローズバドを捉えたところがゴール板だった。
ケント・デザーモ騎手は外国人騎手初のクラシック制覇を達成。ロードホースクラブはこれが嬉しい所有馬GⅠ初制覇。翌週の日本ダービーは同じトニービン産駒のジャングルポケットが勝ち、21世紀も「府中はトニービン産駒の庭」を証明した勝利であった。
3歳秋~5歳
秋は蛯名正義が鞍上に戻り(以降は1戦を除いて蛯名が騎乗)、紫苑ステークス(OP)から始動。1.8倍という支持に応え、4角で先団に取り付くと大外を抜け出し、クビ差ながらきっちり勝利を収めて秋華賞(GⅠ)へ。テイエムオーシャン、ローズバドに次ぐ3番人気に支持され、後ろから外を回して追い込んだが、早め先頭から押し切ったテイエムオーシャンには全く届かず、インを突いて追い込んだローズバドにもかわされ3着。エリザベス女王杯(GⅠ)でもテイエムオーシャン、ローズバドに次ぐ3番人気に支持されたが、ゴール板で5頭が横並びの激闘の末、勝ったトゥザヴィクトリーと同タイムの4着に惜敗し3歳を終える。
さて、オークス単冠馬はその後全く振るわなくなることも珍しくないのだが、レディパステルは4歳以降も堅実な走りを続けた。
4歳始動戦の中山牝馬ステークス(GⅢ)は同期の良血馬ダイヤモンドビコーに6馬身以上ちぎられたものの3着。
府中2300mのメトロポリタンステークス(OP)ではタップダンスシチー・ツルマルボーイという後の牡馬GⅠ馬2頭と激突し、ツルマルボーイの強襲に差し切られたがタップダンスシチーを2馬身離して2着。
ローズバドも出走してきた目黒記念(GⅡ)では、あちらが14着に沈んだのを尻目に牡馬との叩き合いに競り負けたものの4着を確保。
クイーンステークス(GⅢ)ではハナ・ハナ・クビ・クビ・ハナと0.1秒内に6頭が並んだ大混戦の中で5着。
府中牝馬ステークス(GⅢ)(このときのみ蛯名が秋華賞のため京都に行っていたので田中勝春が騎乗)はまたダイヤモンドビコーに蹴散らされたものの3着。
エリザベス女王杯(GⅠ)では3歳馬ファインモーションにちぎり捨てられたものの3着。
結局1年間勝ちきれなかったものの、掲示板を外すことなくきっちり賞金を持ち帰った。
明けて5歳となり、初戦の中山牝馬ステークス(GⅢ)でハイペースの流れを馬なりで追走すると、馬群の中から直線で堂々と抜け出し、紫苑S以来1年半ぶりの勝利を挙げる。
続く府中2400mの東京競馬場リニューアル記念(OP)では56kgと牡馬換算するとトップハンデタイの斤量を背負ったが、1番人気エアエミネムを3馬身離し、前年の有馬記念2着馬タップダンスシチーに2馬身差の2着と充分な結果。
目黒記念(GⅡ)はじっくりと脚を貯め、末脚勝負で一気に差し切りを図ったが、前年覇者トシザブイのインを掬った豪脚にクビ差屈して2着。
府中牝馬ステークス(GⅢ)では久々のローズバドとの顔合わせとなったが、1歳下のオークス馬スマイルトゥモローが1000m通過56秒3という狂気のペースで暴走するのを中団に構え、鋭い末脚で粘るスマイルトゥモローを捉えきり、後方から追いかけてきたローズバドを寄せ付けず重賞3勝目を挙げる。
そしてラストランとして3度目のエリザベス女王杯(GⅠ)に臨み、この年の三冠牝馬スティルインラブと三冠全て1番人気で敗れたアドマイヤグルーヴの死闘の後ろで4着を確保しターフを去った。
通算21戦6勝 [6-6-5-4]。デビュー後は大きな怪我もなく、生涯一度も掲示板を外すことなく賞金を持ち帰り、多士済々の2001年クラシック世代において、カルストンライトオやクロフネを上回る世代10位の4億3000万円を稼いだ、出資者孝行な名牝であった。
引退後
引退後はロードホースクラブと縁が深いケイアイファームの所有となり、アイルランドで繁殖入り。2年続けて*ロックオブジブラルタルと配合され、産まれた初仔のロードバロックと2番仔のロードロックスターはともにマル外として日本で走り、中央で3勝を挙げた。
2頭を産んだあと日本に戻りケイアイファームの繁殖牝馬となり、日本での産駒は第5仔ロードアクレイム(父ディープインパクト)が2012年の神戸新聞杯で2着に入り菊花賞に出走(3番人気8着)したぐらいだったが、5頭の牝馬が繁殖入りして彼女の血を繋いでおり、第7仔パルテノンは2022年のシンザン記念勝ち馬マテンロウオリオンを産んでいる。
レディパステルは2019年に11番仔を産んだのち用途変更となり繁殖を引退。その後は引退名馬繋養展示事業の対象になっておらず、消息がわかっていない。既に亡くなっているのか(死亡を「用途変更」で登録する例は実際ある)、それとも消息が公表されていないだけでどこかでまだ存命なのか……。いずれにしても彼女の血はまだしばらくは残り続けるだろう。
血統表
*トニービン 1983 鹿毛 |
*カンパラ 1976 黒鹿毛 |
Kalamoun | *ゼダーン |
Khairunissa | |||
State Pension | *オンリーフォアライフ | ||
Lorelei | |||
Severn Bridge 1965 栗毛 |
Hornbeam | Hyperion | |
Thicket | |||
Priddy Fair | Preciptic | ||
Campanette | |||
*ピンクタートル 1988 栗毛 FNo.1-l |
Blushing Groom 1974 栗毛 |
Red God | Nasrullah |
Spring Run | |||
Runaway Bride | Wild Risk | ||
Aimee | |||
Turtle Cove 1970 黒鹿毛 |
Dr. Fager | Rough'n Tumble | |
Aspidistra | |||
Sunny Cove | Nearco | ||
Sunny Gulf |
クロス:Nasrullah 5×4(9.38%)、Nearco 5×4(9.38%)
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