『宇宙の戦士』(うちゅうのせんし、Starship Troopers)とはアメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインによるSF小説である。1959年発行。1960年ヒューゴー賞受賞。邦訳は矢野徹によるもの、内田昌之によるものがあり、いずれもハヤカワ文庫SFより刊行。
概要
地球連邦(the Terran Federation)が支配する地球人類と地球外生命体との宇宙戦争における主人公ジュアン・リコの訓練及び戦闘をメインストーリーとし、これと平行して「政治と市民の在り方」といったテーマが描かれる。
宇宙戦争作品としては、強化服(armored suits)と呼ばれる宇宙戦闘用の装備を登場させたことにより、後の多くのSF作品に影響を与えた。強化服を着て戦う兵士は機動歩兵(Mobile Infantry)と呼ばれる。なお、作中の戦場は全て地球外であるが、機動歩兵などを運用する組織は陸軍(Army)、宇宙艦艇を運用する組織は海軍(Navy)と呼称される。
政治に関する設定については、「軍歴のある人間のみに公職に就く権利及び参政権が与えられる」といった法制度や、作中で軍人・元軍人から語られる軍隊や暴力を肯定、美化する政治思想などが論争を引き起こした。この政治思想は、主人公の高校では「歴史と道徳哲学」(History and Moral Philosophy)という科目で、退役軍人の教師により講義される。
世界観
1987年に始まった米英露同盟と中国ヘゲモニーの大戦争により地球は壊滅的な被害を受けた。20世紀の終わりには、各国の政府は崩壊した。
この戦争により地球の秩序は崩壊したが、その後軍事政権の地球連邦が成立した。先述の通り軍歴の無い人間には公民権が与えられない法制度となっているものの、一方で人種や性別による差別はない。
地球は地球外生命体による攻撃を受け、作中の時代において南米や北米の都市が壊滅した。
あらすじ
高校生の主人公ジュアン・リコ(ジョニー)は将来についての具体的な計画を持っていなかったが、親友のカール、クラスメイトの少女カルメンシータが軍に入隊すると聞き、親の反対にも関わらずその場の勢いで志願を決めてしまう。
ジョニーは高校を卒業後、希望した兵科の適正が無かったため、最も過酷とされる機動歩兵に配属されることとなり、キャンプ・キューリーにてズイム軍曹の下で猛訓練を受けるようになる。そしてその時に、人類と地球外生命体の戦争が始まった。ジョニーは死者も出るほどの過酷な訓練をどうにか終了する。
その後ジョニーは兵員輸送艦ロジャー・ヤングのラスチャック愚連隊所属の機動歩兵となり、上官や同僚が戦死する中、戦場をくぐり抜け、軍曹まで昇進する。尚も自身の将来に明確な展望を持っていなかったジョニーであったが、同じ隊の仲間の言葉を受け、士官を目指すことを決める。妻を敵の攻撃により失った後、自らも機動歩兵になっていた父とも再会し、このことを深く喜ばれる。
士官学校の最終試験を終え、臨時の" third lieutenant "という階級(なお中尉は" first lieutenant "、少尉は" second lieutenant ")となったジョニーは、ズイム軍曹を部下として、再び戦地に赴く。この作戦でジョニーはまずまずの働きをするが、ズイムは的確な判断により大きな戦果を挙げる。これによりズイムはジョニーより先に士官となった。ジョニーは一度でもズイムより階級が上であったことがあるということを、とんでもないことだと思った。
少尉となったジョニーはロジャー・ヤングのリコ愚連隊の隊長として、そして今度は自分が見習い候補生を導く立場として、戦場へと出撃して行った。
実写映画
1997年に実写映画化された。日本でも公開されたが、日本でのタイトルも原題のまま『スターシップ・トゥルーパーズ』だったため、『宇宙の戦士』と気付けなかった人も多いのではないだろうか。
また、実写化に際しては対昆虫型エイリアンとの宇宙戦争部分がクローズアップされたが、残念ながら小説の挿絵で描かれたような機動歩兵の強化服は登場しなかった。
2019年までに実写映画シリーズは第3作まで作られ、その後はフルCGで2作の続編が作られている。
日本でのアニメ化
1988年に日本のサンライズによってOVAでアニメ化されている。
『宇宙の戦士』に影響を受けて『機動戦士ガンダム』を制作したサンライズがアニメ化を手掛けることには因縁を感じざるを得ない。
関連動画
関連項目
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