FCS-3とは、海上自衛隊が使用している射撃指揮装置(多機能レーダー)である。「短SAMシステム3型」「00式射撃指揮装置」などとも呼ばれる。
概要
護衛艦に搭載され、様々な目標を捜索・探知・追尾し、かつ護衛艦の各種武器を管制するシステム。
ソ連海軍の対艦ミサイル飽和攻撃から自らを守るためのシステムとして開発がスタートした。
目標を捜索するレーダーと、武器を管制するFCS(射撃指揮装置)はそれぞれ別のシステムだったが、FCS-3はその2つを1つにまとめている。
目標の捜索追尾を行うCバンドアンテナと、ミサイルを管制するXバンドイルミネータの2種類のアンテナを4方向に備えているのが外観的な特徴であり、他に艦内に本体とも言える各種計算機などが収容されている。艦によっては、可視光や赤外線で目標を照準するE/O照準器も加わる。
といった様々な任務をこなす。
ひゅうが型護衛艦で初めて搭載された後も改良を重ね、今や新型護衛艦の標準装備となっている。※いずも型護衛艦はESSMを装備しないので、FCS-3から射撃管制機能を省いたものを「OPS-50」として装備している。
特徴
- 4方向固定式のアクティブ式フェイズドアレイアンテナ(AESA)の採用
イージス艦が積むSPY-1レーダーと同様、四方向にアンテナを固定配置する方式を採用。
これにより、全方向を切れ目無く捜索することが出来る。
また、SPY-1が一台の送信機と受信機を複数のアンテナが共用するパッシブ式なのに対し、
アンテナ一つ一つが送信機と受信機を自前で持つアクティブ式を採用した。
これにより、故障に強く、またアンテナの配置に制限が少なくなり、設置の自由度が増した。
- Cバンド周波数帯の捜索レーダー
捜索レーダーにCバンドと呼ばれる周波数帯を選択した。SPY-1の使うSバンドに比べ、低高度目標の探知能力に優れるほかアンテナを小型化でき、電波妨害に強い長所がある。 その代わり、探知距離と悪天候への耐性ではSPY-1のSバンドが勝る。
- Xバンドのイルミネーターの追加
元々FCS-3は国産のアクティブ・レーダー・ホーミングミサイルであるAHRIM(XRIM-4)を使用する前提で開発されていたため、ミサイルの終末誘導を行わないCバンドレーダーとなった。ただAHRIMは中止になり、代わりに米国のESSM艦対空ミサイルを使うことになったため、終末誘導を行うためのXバンドのイルミネータが追加された。2種のアンテナの内、小さい方がコイツ。
- 民生品の使用
試作品から正式に搭載するにあたり、計算機などに民生品を用いてコストダウンと性能向上を両立している。
試験艦あすかに搭載された試作品と、ひゅうがに搭載された制式版では処理能力が100倍違うとのこと。
イージスシステムとの違い
FCS-3は時折「ミニイージス」と呼ばれることもあるが、全く別の存在である。
イージスシステムは、原子力ミサイル巡洋艦が艦隊全体の防空に使う大規模システムとして生まれたが、FCS-3はより小型な護衛艦が自分自身を守る防空戦闘に使う、比較的小規模なシステムとして生まれた。つまり、元から見ている方向が違うのである。
さらに言えば、FCS-3が担っている役割は、イージスシステムの中の、ごく一部のものでしかない。
イージスシステムに相当するものは海自護衛艦でいうと、FCS-3などの各種戦闘システムを、艦内LANで連接した、 ATECS(新戦闘指揮システム)が該当する。
なお、FCS-3とイージスシステムのどちらが優秀か?という比較が存在するが上記の通り適切ではない。
艦隊防空能力について言えば、イージス相手では所詮自衛が主目的のFCS-3は逆立ちしても適わないし、一方で小型艦に積むにはイージスは大きく高価すぎ、FCS-3には適わない。
まともに比較するとなると、イージスのレーダーであるSPY-1を、小型艦が積めるように小型軽量化したSPY-1Fなどに交換するなどのスペックダウンを施した、真の意味での「ミニイージス」が対象となるが、それが相手なら、アクティブ式フェイズドアレイアンテナの採用でアンテナ設置位置の自由度が高く、また遠距離探知向きなSバンド周波数帯を使うSPY-1系列よりも、低空捜索向きなCバンドを使うFCS-3の方が小型艦の任務的には向いているので、FCS-3の方が優秀と思われる。
バリエーション
- FCS-3
ひゅうが型護衛艦で搭載されているモデル。一時はあすか搭載版の改良型なのでFCS-3改とも呼ばれた。
民生品の採用による性能向上とコストダウン、光ファイバーで構築された艦内LANへの接続、
新型戦術情報処理装置OYQ-10 ACDSとの接続など、様々な改良が施された制式版。
- FCS-3A
あきづき型護衛艦に搭載されているモデル。ひゅうがには無かった主砲の管制機能が追加された。
また、新たに素子にGaN半導体(ガリウム・ナイトライド)を採用し、出力を3倍に向上している。
これにより、隣接する艦を守る程度の小規模な艦隊防空能力(僚艦防空)を確保している。
- OPS-50
いずも型護衛艦に搭載されるモデル。 対空捜索と航空管制に特化し、純粋な対空レーダーとなった。
ミサイル誘導用のXバンドイルミネーターが廃止され、Cバンドアンテナのみで構成される。
将来の発展
- 25DDへの機能限定型搭載
あきづき型の改良型である25DD型はコストダウンのため、FCS-3の性能を一部制限している。
ESSMの複数誘導を行うためのタレス社のICWIと言われる装置をオミットし、同時攻撃能力が低下した。
一方、代わりの限定的なものを国産で調達したのでICWIの国産化に向けた第一歩、と見ることも。
ちなみに契約情報から25DD型では名前がFCS-3から「OPY-1」に変更された可能性が指摘されている。
なお、呼び方は海自式なら「オーピーワーワン」ではなく「オパイワン」となると予想される。
つまり(ry - Xバンドイルミネータへの捜索機能追加と軽量化
途中から追加されたXバンドイルミネータは、ESSMの誘導しかしない勿体ない存在である。
そこで、Xバンドイルミネータに捜索機能を新たに追加し、近距離での捜索を任せることにした。
その分Cバンドアンテナを小型化することで軽量化を図る。また省電力化と電波妨害への耐性を強化。
これにより、あきづき型(約5000t)より小さい3000t級の船体に搭載が可能となる見込みである。
現在、試験艦あすかで洋上試験中。
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